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 明々白々のことながら、会場構成はできるかぎり透明になることが求められる。そして展示空間をいかにして鑑賞経験の「地=環境」とするか、という課題はつねに、展示物の個別具体的な性格と会場の物理的特徴のあいだで揺れ動く配置=レイアウトを吟味していくことでしか達成できない。

 そのうえで「内省」と「読書」をテーマとする本展においては、鑑賞者が展示物と一対一の関係で向き合える環境を用意することが大切だと考えた。ひとつの展示物を複数人で同じ場所から眺める、ということではなく、ひとりの鑑賞者がひとつの展示物を独占すること。まさに本を読むように模型と出会い、「あなたと私」という鑑賞者と展示物の対話的状況を限られた展示スペースのなかで用意すること。であれば会場構成のコンセプトは単純明快で、展示物の鑑賞位置を独立させ、展示空間をできる限り広く使いながらそれらを分散配置していくこと、となる。

 さて、本展の主たる展示物となる「断面模型」はひとりの鑑賞者の身体が他者の鑑賞を妨害せざるをえない、という少々特殊な性格をもっている。が、上記の視座に立てばこれはむしろ好都合な与条件である。問題は、模型の前に長時間いすわり鑑賞を占拠することを当たり前のように許容するような雰囲気をいかにして用意できるか、という点であるが、そのために今回は、断面模型以外の展示物(全体模型、写真、図面、テキスト)の鑑賞においても特定の体勢・位置での鑑賞が促されるようにサイズや色、距離関係を調整していった。

 ある人物、ある展示物、ある場所がつくるひとつの個別具体的な「ここ」からの眺めのセット−鑑賞者と展示物の局所的な関係性のもつれ−のレイアウトの調整により、展示室内の鑑賞者の位置、 体勢、首の角度、動線、移動の速さ、等々は散り散りになっていく。翻ってはそれが、展示物(とりわけ断面模型)とのじっくりとした対話を約束するものとなるだろう。

大 

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 展示会場は約30㎡、こじんまりとした市民ギャラリーといった感じ。床はピカピカなのに、巾木がなぜだか真っ黒でその対比がすごく目立っている。壁にはススや黄ばみが散見できてお世辞にも綺麗とはいえない。この会場に展示テーマ―内省する空間―を生み出す。一筋縄ではいかないなと直感的に思った。

 本展覧会で少々やっかいなのは、展示物のほとんどが「建築の断面模型」であることだ。そのことによって必然的に、机ではなく、展示台が必要とされた。模型とはいえ所詮ペーパークラフトだ。侮られれば誰も見ないだろう。展示物まで惹きあげ、神格化させる。求められた鑑賞空間としての質/緊張感は明白である。

 ここで思い切って、展示室を上下真っ二つにわけた。つまりは、下半分の空間を放棄し、なにかすること、一切を辞めた。キラキラした薄黄色の床、黒い巾木、節ありの赤松、スツール60だけが並び、不自然になじんでいる。地としてのムード、そのオーダーを天板高さ:950㎜として定めた。

 950㎜とはとても中途半端な値である。立ち仕事にはちょっと高いし、椅子に座ったら何もできない。天板を高くすることは、言葉に反してそう容易ではない。展示台とするなら脚がとても目につく。四本脚にすればスレンダーになるが、高さに比例して構造は太くなる。またそれ以上に展示台の裏側が容易に見られてしまうという矛盾を抱えることになる。

 四方向から観賞されるために、後退した幕板と逆梁が構成材を解体し、突き抜けた脚小口のディテールが、天板「見付け」に浮遊感をもたらす。ここでの950㎜とは、“展示物を俯瞰可能で断面模型を覗き込める”その「視座」に特化したオーダーでありながら、展示台の構造をできるだけ透明化する、その意味作用である。形状の中立性は鑑賞への没入を促すと同時に「静かな全体性」ともいえるような空間の質を展示室にもたらした。

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