The last day

March 1, 2018

 

 ポルトガル最期の日を迎えた。少し長くなりますが、まとめようと思います。訪れる前はとても長く感じたのに、半年なんてあっという間です。これまで柄にもなくテキストを書いてきましたが、これには理由がありました。全ては今後の自分のため。とくに博論執筆にむけた文章力の向上。また新しい環境に対しインプットだけでなく、アウトプットを繰り返す。言葉にして記事にするにはまず調べなきゃいけません。未開のポルトガルで、知見を芋づる式に広げていく。正直なところ、建築を訪問してあれこれ言うのは主義でないのです。あまりしたくない。目的は別にありました。否定するのは簡単、そうではなく、記憶に残った部分、良いところを私の"切り口"で見つけ出し、言葉にしてみよう。例えば「いい感じ」何がいいのか、何処を見てそう思ったのか、体験をもう一度俯瞰してみる。そこで思ったことを素直にわかりやすく文字に起こした。人によっては多少食い違う意見あるだろう。虚偽や湾曲のない、ありのままを書いたつもりだ。

 留学に則して、母国と連絡をほとんど取らなかった。ニュースも見たくない。外界との情報をシャットアウトした上で、日本語に触れる機会を意図的に無くした。またPhDのプログラムは少し特殊で、留学といっても授業はない。インターンシップもない。何してんの?なんてよく言われる。あるのは研究だけだ。言い換えると、とにかく自分の興味の世界に没頭できる。ただ純粋に時間だけが与えられた。仮に授業があれば、おのずと自分の居場所ができる。「所属」には精神的なスケールが含まれる。しかしそれが根こそぎ無いため、ひとり異国で宙吊りにされたのだ。だからこそ私が取った行動は、ツーリストが決して行かない場所へ土足で踏み込み、汚ねえバーで英語できないおっさんと喋る。サッカーを観戦する。ナイトライフで終電を逃す。シェアハウスで見たくもないパンティと会話する。コスパ最高地元カフェをみつける。「所属」を探し転々とした。場所性を見分けて、使われ方を身体化して、生々しい文化に触れた。そもそも私の興味の方向は設計者が介在しない、普遍的な世界にこそある。色々動き回りましたが、だからといって、何か劇的に自分が変わったわけではないのです。これはとても大切なことで、留学で変わるなんて考えは迷信。まったく通常運転。日本にいた時と変わらぬ。マインドは鍛えられましたが英語力も対して伸びてません。たまに誤解してる人がいるけど留学なんてそんなもの。しかしながら設計者として携わっていく今後、たぶん10年後くらいかな、かけてゆっくりと、確実に、自分の思考へ変換されていくような、ものづくりにおける何かを得た。重要なのはその時でなく、持ち帰ってどうするか。(美徳化しない)フラットな読み替えの思考なのだと思う。

 あとこれは自分の問題だが、単に私はお金がなかった。EUに留学している多くの知人は色んな国を飛びまわっている。地続きだから安いし沢山の経験ができる。当たり前だけど自分はそれができなかった。羨ましくてしょうがない。だからこそ思考を変えてみる。ポルトガルにどっぷりと浸かろう。物価も安いし、低所得者が多いのだ。自分にぴったりじゃん!思ったのだけど、留学生は以外と自分が居るその国について知らない。それなら私は、単に生活者としての枠を超えてみよう。住民からすると当たり前の経験や場所。とにかくそこに投資する。観光も大事だが、それ以上に生活に興味がある。おかげさまで飯屋マップが建築の数を凌駕した。だし、ポルトガル国内なら軽く20都市は行ったんじゃないかな。同じように見える文化でも相対的にみると全然違うことに気付く。

 私の研究過程は、建築家「原広司」の著書『集落の教え100』と似ているようで、対局に位置する。彼は研究における観察者の立場を、あえて「旅行者」という目線に絞った。集落の表層とイメージの類型分析。そうではなく、私の場合はもっとディープに、ある場所に限定して徹底的に潜り込む。だからこそ見えてくるヒューマニティを見つめ直す。その研究対象が以前紹介した「旧市街アルファマ」だ。面白い点は、日本とポルトガルには多くの共通項があること。第一にまず地震があり、中山間地に位置する。同緯度のため気候条件が似ている。加えて味覚や味付けといった食生活、生活習慣や洗濯のしかたなど、本当に日本そっくり。しかし都市構造は劇的に異なるのだ。ポルトガルと日本、これらを相似的に分析するのが私の役目。とても興味深くあります。つまりヨーロッパはヨーロッパ、ではない。言い換えれば、日本は考え方次第でポルトガルになり得る。逆もそう。ここでの経験がダイレクトに設計へ繋がるわけである。留学はなんとなく流れで決まったのですが、自分自身どんぴしゃの国で驚いています。色々と苦労もありましたが、何だかんだ来てよかった。なんてったって飯は美味いし、年中晴れだし、なによりポルトガル人の人間性がほんとに素晴らしい。建前のない親切さ、笑顔と陽気さ。それにすごく適当。怠惰でマイペースな所が素敵です。まだ留学を迷っていた時期に「たまには教授の話を聞け」とエレベーターで先生にさとされた言葉が身にしみます。きてよかった。ああラーメンがくいたい 

 

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